≪視覚障害者・聴覚障害者からの7つの提案≫
新型コロナウイルス感染拡大により、
私たちが抱える困難のポジティブな解決に向けて
ダイアログ・イン・ザ・ダークを主催する一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティでは、4月23日~26日、新型コロナウイルス感染拡大による視覚障害者・聴覚障害者が抱える困難への実態調査を行いました。合計165名にご回答いただき、仕事や学習の変化には約6割が不安を感じていること、生活面や情報取得、コミュニケーションにおいて多くの困難があることが見受けられました。
私達は、政府の専門家会議が提言した「新しい生活様式」を受け、人と人の分断ではなく、合理的配慮をしながらどのように社会が変われば、より豊かなアフターコロナの社会を作れるか、対話しながら考えるべきであると思っております。
アンケート結果詳細:https://djs.dialogue.or.jp/news/20200506/
また、5月6日には国連が「障害者を新型コロナ対策の中心に入れ、意見を取り込むことを要請する」と発表しています(※1)。
これらを受け、日頃から視覚障害者・聴覚障害者とともに働く私たちから発信できることとして、視覚障害者・聴覚障害者当事者からの7つの具体的な提案を発表いたします。
この提案を通して、新型コロナウイルス感染拡大による変化や困難を、当事者やその家族のみが抱える課題とするのではなく、地域や社会全体で対話しながら解決ができればと思っております。
視覚障害者からの7つの提案
1. メディアの画像やグラフは「具体的に言葉に」なれば、みんなと一緒に知ることができる
テレビやホームページ、あらゆるメディアには、写真や絵が多く「ご覧の通り」等の説明がありますが、私たちは見ることができません。ラジオのように、言葉にしてください。また、WEBの写真や画像には文字コメントを入れていただけると、私たちは音声で聞くことができます。
2. 助成金などの説明や申請手段を一緒に考えてほしい
手続きには読み書きが必要で、視覚障害者が一人で行うことが困難です。電話での手続き方法や、担当者が自宅に来ていただけるなど、私たちができる方法を取り入れていただけると安心できます。
3. 「もしも」の場合の移動手段を一緒に考えてほしい
新型コロナウイルスに感染したかもしれず、検査に行く場合、病院や保健所等に単独で公共交通機関を使わず行くことは困難です。初めての道、初めての場所、体調が悪い時には、五感が鈍り、状況把握が普段よりできません。国や自治体から、病院や保健所までの送迎をお願いしたいです。
4. 「触れること」は私たちが情報を把握するための一つの手段です
公共の交通機関などを含め、あらゆる場所で、触れて周囲の状況を確認している私たちです。そのため、ウイルス感染の恐怖と常に隣り合わせであり、周囲に感染させてしまうのではないかという不安も大きいのです。例えば、電車やバスでは、感染への不安から吊り革や手すりは掴まれません。もし空いている席がありましたら、教えてください。そして、席を譲っていただけると嬉しいです。また、沢山の人たちと同じように、もしくはそれ以上に、視覚障害者もマスクや除菌シート、アルコールなどを必要としていることを知ってほしいと思います。
5. フィジカルディスタンス(※2)や街の変化を、声で伝えてほしい
そもそも目視で確認ができず、フィジカルディスタンスと言われても、十分な距離をとることができません。また、街中やスーパーの張り紙などが見えません。並ぶ位置や、お店・薬局の張り紙等になにか変わったことなどがありましたら、店員さんに関わらず、ぜひ声で伝えていただけると助かります。
6. こんなときだからこそ、声をかけていただけると一層あたたかい気持ちになります
以前よりも声をかけてくださる方が減りましたが、このような中でも、気にしてくださる方もおり、嬉しくありがたく思っています。視覚障害者が近くで困っているようであれば、声をかけてください。その際には、横に並んで声をかけていただくと分かりやすいです。誘導していただく時には、手のひらではなく、肘や肩を持たせてください。
7. はっきり、笑顔・笑声を
マスクの下の声からも、十分に表情や感情が伝わります。いつも以上にはっきりとした声で、お互いに笑顔、笑声で、安心できるコミュニケーションをしましょう。
聴覚障害者からの7つの提案
1. 手話通訳や字幕があれば、みんなと一緒に知ることができる
今回、多くのメディアが会見時の手話通訳を映してくださっていることに感謝しています。画期的な進歩だと感じています。一方で、リアルタイムの情報でない場合には、手話通訳が映らない場合もあります。また、字幕を必要とする聴覚障害者もおります。可能な限りすべての映像に、手話通訳、そして字幕を付けていただけると正確な情報を共有できます。
2. 「もしも」の場合を一緒に考えてほしい
「もしも」の場合の連絡先に、電話番号の記載のみが目立ちます。聴覚障害者は、「電話リレーサービス」などもありますが、完全に普及しているとは言えません。FAXやメール、LINEなどのSNSでも、ご対応いただけると嬉しいです。また、助成金申請や病院受診の際には、あらかじめ想定される質問事項を文字や図で表示したものを用意していただけると、指をさすだけで意思疎通しやすくなります。
3. 音声認識アプリを使えば、リアルタイムで伝わる
最近は、音声を自動で文字化してくれる音声認識アプリも増えてきています。日常の会話はもちろんのこと、オンライン会議の時など、音声認識アプリを使えば、聴覚障害者も会議の内容をリアルタイムで知ることができます。ぜひこういった機能も活用してみてください。
4. 声も筆談も、大きくはっきりと
聴覚障害者といえど、その障害は様々です。マスクをつけるとくぐもった声になりがちですが、難聴や高齢者の方には、大きな声ではっきりと話せば伝わることも多いです。また、聴覚障害者は、筆談でコミュニケーションをお願いすることもあります。ソーシャルディスタンスをはかりながら筆談をする際には、距離があっても見やすいよう、大きな文字で書いてください。
5. ジェスチャーやボディランゲージも、みんなにとってわかりやすい
手話ができなくても、ジェスチャーやボディランゲージでも十分に伝わるものがあります。また、スーパーなどで、袋や箸などは必要かどうか尋ねるときには、実物を見せていただければすぐに伝わります。視覚的にわかりやすい工夫は誰にとっても便利です。
6. 手話はフィジカルディスタンスが取れるコミュニケーション手段
手話は、大声を出さなくても想いを伝えることができます。また、相手が見えれば、離れていてもコミュニケーションがとれるのでガラス越しでも自由自在に会話ができます。この機会に、手話についても興味をもってもらえたら嬉しいです。
7. マスクをつけても、アイコンタクトと笑顔を
マスクをしていても、笑顔は目や頬の動きで伝わってきます。アイコンタクトをとるだけで、安心ができます。マスクをしているからと言って、顔の表情はお休みせず、目と目を合わせてお互いにやさしい気持ちを伝えあいましょう。
弊法人では、2020年7月、東京・浜松町「ウォーターズ竹芝」内にオープン予定のダイアログ・ミュージアム「対話の森」に向け、現在ふるさと納税やご寄付等を通して、ご支援を募っております。
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※代表・志村からのメッセージはこちら
調査アンケート概要
【調査内容】在宅長期化に伴う視覚障害者・聴覚障害者が抱える困難に関する実態を把握。特に、生活面・情報取得の面や、コミュニケーションに関する事項を調査。
【調査日】2020年4月23日(木)~ 4月26日(日)
【調査対象】視覚障害者・聴覚障害者
【人数】 総回答数:165名
※内訳 視覚障害者:71名、聴覚障害者(ろう者、中途失聴・難聴者):80名、重複障害者:7名、その他:7名
【調査手法】WEBアンケート
※全データはこちらよりダウンロードください アンケート結果全データ
参考)
※1 国連からの提言: https://www.un.org/en/coronavirus/we-have-unique-opportunity-design-and-implement-more-inclusive-and-accessible-societies?fbclid=IwAR0ZE-FrPVijX1DBUnMyzzN6cM7KMXsi1Xt0MF-f4Gwa5MkL8MDqLuun4fk
※2 フィジカルディスタンス: これまで「ソーシャルディスタンス」と言われていた、人と人の間に十分な距離を保つことです。世界保健機関(WHO)により言い改められました。フィジカルは「物理的」という意味。あくまで物理的な距離を置くだけだと伝える狙いで、WHOの専門家は「人と人とのつながりは保ってほしいと願うからだ」と解説しています。